最近、売れ行き今ひとつだというN-BOXに試乗しました!
試乗したのはカスタムターボだったため、ファーストカーとしてどうなのか、確かめてきました。
まずは総論から。
◯良かった点
・軽スーパーハイト系もここまできたかと思う走り
乗る前から予想はしていましたが、まぁ確かにすごいと思います。
首都高を走り回っても怖いと思うシチューションがほとんどありませんでした。
タイヤがたわむ感覚もあまりなく、ステアリングも軽すぎず不安感はなく、加速もいいので合流も怖くない。
巡航時に至っては120km/hでエンジンは3700rpmくらいなので、車内は平和です。
以前乗った、ekクロススペースのターボでは無理して120km/h巡航をしたような印象があったので、余計にそう感じます。
ワゴンRあたりのハイト系ではなく、スーパーハイト系でこの走りになれば、ホンダがソリオやルーミーのようなリッターカーを作らない理由が分かる気がします。
一瞬怖いと思った場面も、通常より速い速度だったり、車を信じていないからそう思うだけで、慣れてしまうと全く問題ないレベルだと思います。
・静粛性とパワートレーン
通常の使い方だと、高速の追い越し加速も含めてエンジンの4,000rpm以上を使わなくても十分なので、エンジンのCVTがよくセッティングされていると思います。
静粛性も高いので、高速長距離でも疲れにくいだろうなと感じました。
・センタータンクレイアウトの実用性
これはライバルに比べていつまで経っても色褪せない魅力的だと思います。
リヤシートのスライドとチップアップを両立しているので、これを駆使すればどんな用途にも応えられるのではないかと思う実用性です。
・適度な囲まれ感のあるシートポジション
もう少し視点が高い方が良いという方もいるかもしれませんが、高速走行時の不安感を考えると、適度にウエストラインが高いデザインとシートポジションは、開放感と安心感のバランスを取った絶妙な設計だと思いました。
・制御が洗練されたACC
渋滞のような低速制御も前後のGが突然強くなるようなことはなく、安心して車に任せられます。
◯気になる点
・走りの楽しさはない
満足な点と矛盾するようですが、高速を走ったりカーブを曲がったりする際に、リッターカーに迫る安心感があるということであって、そこに駆け抜ける喜びがあるということではありません。
それはターボでもライバルの他車も同じです。
当たり前ですが。
まぁでも、ハンデのある車でも頭を使ってそれなりに速く走れるのは楽しいかもしれません。
・時々は背の高さを思い出させる
高速でトラックに追い抜かれるときに進路が一瞬乱されるあたりは物理的に仕方ないかと思いますが、リラックスして走っているときにそういう場面があるとN-BOXに乗っていることを思い出します。
・シート表皮
シート自体は大型で座り心地も良いのですが、なぜ上級グレードはこぞって表皮が合成皮革なんでしょうか。
N-BOXだけじゃないですが。
ただでさえベンチシートで滑りやすいのに、この表皮だと余計に滑りやすくて疲れてしまいそうです。
・目に付くコストダウンの数々
室内灯がいまだに豆球なことに始まり、先代にあった車速感応ドアロックをレスにしたり、リヤスライドドアの開閉用スイッチもレス(ディーラーオプションで設定あり)、フロントバンパーの標準仕様との共通化、リヤサーキュレーターの未設定などなど、ライバルには標準なのにN-BOXには設定すらない装備が目立ちます。
・やや情報過多なメーター
情報量の割にディスプレイが狭いのかもしれませんが、なんか煩雑とした印象です。
大事な速度計は大きく表示されていて、見にくいということではないのですが、それ以外のサブ的情報を瞬時に読み取りにくい気がします。
ADASが当たり前になり、表示させる項目が増えた現代では、小さなフル液晶メーターより、普通のメーターとHUDの組み合わせの方がいいのかもしれません。
・ブラインドスポットモニター未設定
ルークスのMCで追加されたり、ムーブキャンバスにディーラーオプションで設定されたり、軽にもいよいよブラインドスポットモニターの設定化の波がきているのに、その波に乗れませんでした。
ファーストカーとしての軽を考えるなら、早期設定を望みます。
・ライバルより割高な価格
コストダウンが目立つ割に、ライバルより安いということはなく、この辺は王者の風格という感じです。
続いて各論です。
◯デザイン
個人的には標準仕様と共通化したフロントバンパーが気に入らないです。
サイド&リヤはスカート風になっているのに、フロントはそれがなく、アンバランスです。
あとは仕方ないですが、あんまり変わり映えしないデザインも、地味な印象を受けてしまいます。
◯走り
首都高に合流して、最初のカーブで少し驚きました。
今までの経験値から想像するロールがまったく出てこず、スーッと曲がったからです。
タイヤが倒れ込むような感覚もなく、安心して首都高を流れに乗って走れました。
さすがに、ゆるやかな登り坂での速度維持はエンジン回転が上がりますが、それでも4,000rpmに届くか届かないかという程度で、全体的に軽としてみれば余裕のある走りでした。
◯乗り心地
ロールの感覚を思うと、硬いかもという先入観がありましたが、悪い印象はありませんでした。
もちろんふわふわでショックを軒並み吸収するという脚ではありませんが、スーパーハイト系はふわふわだと不安感を煽るだけなので、多少硬めかと思う程度でちょうどいいと思います。
◯ラゲッジ
リヤシートを倒せば広大なスペースです。
リヤシートは1番前にスライドさせても、後部座席に大人が座れるので、大人4人で1泊旅行も不可能ではないと思います。
◯燃費
深夜の首都高を流れに乗って走って、20.0km/Lに届かないくらい。
エアコンにあまり負荷がないので、条件的には恵まれていたのだと思いますが、スーパーハイト系のターボと考えると良い方だと思います。
◯価格
ライバルに比べてオプションとなる装備が多く、それでいて本体価格も高いので、コスパは良くないと思います。
ただし、先代はリセールが良かったですが、売れ行き今ひとつな現行型では、そこでカバーできるのでしょうか。
最後にこの車の印象のまとめです。
今回の試乗車はターボだったので、冒頭に書いたとおり、ファーストカーになり得るか、という視点で試乗していました。
結果、高速を普通に走り回れるどころか安心感すらある走りっぷりで驚きました。
ホンダにはリッターカーのハイト系がないので、軽で上のクラスまでまかなわなければならないという事情があるのでしょうが、ここまでよく走れば確かにリッターカーはいらないよなと思わせてくれる軽自動車でした。
では、N-BOXがクラス最強かといえばそんなことがないのが激戦クラスの面白いところです。
走りの質感はN-BOXが優れていると思いますが、スペーシアは快適装備が充実していたり、ルークスは安全装備が充実、デリカミニはデザインやキャラが唯一無二、といったそれぞれにストロングポイントがあります。
激戦クラスは、自分の使い方や好みに合わせて選ぶことができるというのが最大の魅力ではないでしょうか。
かつてはカローラ、サニー、シビックといったセダンや、レガシィ、カルディナ、アベニールなどのステーションワゴン、クラウン、セドグロ、レジェンドの高級セダンなど各社が競っていた枠がどんどん減ってきて、今日本で1番ホットなのが軽自動車というのがなんとも悲しい感じもしますが…。
高速や長距離をよく使うというという方、後席の利用頻度と大きいのものを載せる頻度が両方高い方にはN-BOXが向いていると思います。
コスパ重視、大きい荷物を乗せることは少ないならスペーシアや、MCしても少し古くなって値引きがあるかもしれないルークスといった感じで、明確にこれが1番いいという結論は出せないので、じっくり乗って考えてみてください。