ヒョンデ IONIQ5のNに試乗してきました!
めっちゃすごい車でした!
まずは総論から。
◯良かった点
・物理の法則を無視したかのような性能
車重が2.2tあるのにまったく重さを感じさせないコーナリング、加速性能を持っています。
サーキットで楽しむことも使用目的に入っている車なので、公道レベルではどんな速度でもサラリとコーナーをこなしてくれそうです。
回生ブレーキも強めに効きますが、物理ブレーキもしっかり効き、フィーリングも良いので安心して飛ばせます。
・乗り心地
この車で1番驚いたポイントです。
ダンパーを最もコンフォートなモードにすると、「スポーツモデルの割に」という枕詞抜きで、普通に乗り心地が良いです。
それでいてそのモードでも、高速コーナリングはサラリとやってのけます。
家族でのロングドライブも普通にできるレベルの乗り心地です。
というか、基準車より良いです。
・高い実用性能
後席もラゲッジも広く、乗り心地もいいのでファミリーカーとしても使えます。
航続距離も実用値で400kmは超えてくるようなので、これ一台でなんでもできるオールマイティな車です。
・装備レベルの高さ
フロントシートはマニュアル調整式のスポーツシートなのに、シートヒーターはもちろん、ベンチレーションまで標準で付いてきます。
もちろん、リヤシートにもシートヒーターは付いています。
さらにアコースティックガラスやBOSEのオーディオまで付いてきます。
価格を考慮すると、かなり頑張っていると思います。
・所有欲が高まる演出
フル液晶メーター、HUD、センターディスプレイと標準車とは表示内容が異なり、ソフト面もしっかりコストを払って作り込まれていることが分かります。
調整可能なパラメーターがたくさんあるので、それらをいじって遊ぶのも楽しそうです。
・足の長さ
現時点ではスペック未公表ですが、カタログ値で500km程度、実際のところは400km以上は走れるようです。
電費が5km/kwh程度のようなので、80kwのバッテリーとして400km。
ほぼ同価格のレクサスRZより長く走れそうです。
・価格
この車の内容が諸費用コミコミで900万というのは驚異のコスパです。
・Nブランド
ヒョンデというブランドをうまく消すことのできるNブランドは、韓国車だから購入に踏ん切りがつかないという忌避感を薄めることができると思います。
・前後同径タイヤ
高出力なモーターと2.2tという重量を支えるため、かなり負担がかかっているであろうタイヤは、275/35ZR/21という巨大でいかにも高価なもの履いていますが、前後同径であるため、ローテーションが可能になり、長寿命化を望めます。
また、4本購入が可能なので維持費の低減にも交換するはずです。
・維持費の安さ
購入時の費用に、5年の一般・特別保証と初回車検の基本費用までの整備費用が含まれており、初回車検は税金+走行用バッテリーのクーラント(7、8万円くらいとのこと。)程度で済みます。
また、ハイパフォーマンスモデルにありがちな高価なエンジンやミッションオイルの交換もありませんし、完全停止まで可能な回生ブレーキを使用すれば、ブレーキパッド&ローターの交換頻度の低減も図れます。
さらに、BEVなので、自動車税は最低ランクです。
維持費はかなり抑制できるはずです。
◯気になる点
・最小回転半径
この車の唯一にして最大の不満がこれです。
元々基準車でも最小回転半径が6.0mなのですが、Nの場合6.2m強となっており、はっきりと小回りが効きません。
駐車はかなり苦労すると思います。
六本木ヒルズの自走式地下駐車場には行きたくないです。
・店舗網の弱さ
これはプロダクトへの不満ではありませんが、ハイパフォーマンスモデルの売り方として、直営の実店舗が事実上横浜にしかないのは不満です。
次に各論です。
◯デザイン
基準車は無機質な家電っぽいデザインですが、Nはエアロパーツによってかなり車くさいデザインになっており、昔からの車好きにとってはそれが魅力的です。
◯走り
素人が行動で扱うレベルでは、走る曲がる止まるにおいて不満なんてありません。
加速はストレスなく滑らかに、コーナーではアンダーのアの字も感じさせず、ステアリングを切れば切っただけ曲がるし、ブレーキは車重をものともせずガツンとかつコントローラブルに効いてくれます。
ダンパーを、乗り心地も確保できるもっともコンフォートなモードにしていてもこれだけの走りができるので、もう脱帽です。
基準車では気になった、ステアリングインフォメーションの薄さも気になりませんでした。
◯乗り心地
この走りで、なんでこんなに乗り心地も良いのか不思議なほど乗り心地が良い車です。
試乗開始直後から全然硬さを感じず、よっぽど路面の舗装がキレイなんだろうなと思いつつ、Nモードに切り替えて驚きました。
Nにした途端、路面のアンジュレーションを拾いまくり、それなりに荒れた路面だったからです。
それをコンフォートなモードではフラットにこなしていました。
気分や用途でダンパーを使い分けることができるメリハリの効いた素晴らしい脚です。
日本仕様用に脚のセッティングを煮詰めたそうですが、その手間をかけたかいのある乗り味に仕上がっています。
◯ラゲッジ
基準車に比べると、フランクが廃止されていますが、リヤラゲッジでも十分な容量を備えています。
◯電費
電費は5.0km/kwh程度とのことで、タイヤサイズやパフォーマンスを考えるとむしろいい数値でしょう。
◯価格
現在公表されている約900万という数字は、諸費用込みを想定しているとのことです。
これに補助金が30万円程度付きます。
イニシャルコストはほぼ同額のARIYA NISMOなんて目じゃないコスパです。
ただし、リセールが未知数なのがなんとも…
投資的な意味合いのある買い方はおすすめできません。
最後にこの車の印象のまとめです。
ここ5年に乗った様々な車の中で、たぶん最大の衝撃を受けました。
乗っている際に鳥肌が立ちました。
BEVでもこんなに楽しいクルマができるのか、なぜこれを日本ではなく韓国で実現してしまったのか、やはり日本はBEVではかなりテールエンダーなのではないか、など様々なことを考えさせられました。
はっきりいって、このレベルのBEVを日本が出すまでにはまだまだかなり時間がかかると思うし、このレベルのコスパを実現するのは無理かもしれません。
ヒョンデの方いわく「本気で日本で売りに来ています。」とおっしゃってましたが、韓国人の本気は怖いです。
この車でヒョンデブランドのイメージが底上げされ、基準車やKONAなどが売れてしまうことが日本にとって最大の脅威かもしれません。
うさぎとカメの話のように、韓国車だからとバカにしているうちに、気がついたら抜かれていた、そんな印象を受けるすごい車でした。
今年の個人的カー・オブ・ザ・イヤー筆頭候補です。